我々は、これまでの研究から、筋芽細胞(C2C12細胞)をBMP-2で処理すると、筋細胞への分化が完全に抑制され、骨芽細胞への分化が強力に誘導されることを見いだした。そこで本研究では、BMP-2による筋細胞への分化の抑制と骨芽細胞への分化誘導の相互作用を解析した。 まず、筋細胞の分化を促進する転写調節因子(MyoDとMyogenin)を線維芽細胞に導入し、恒常的にMyoDやmyogenin mRNAを発現する細胞株を樹立した。これらの細胞の筋細胞や骨芽細胞への分化に対するBMP-2の作用を検討した結果、BMP-2は筋芽細胞の場合と同様に、これらの細胞でも筋細胞への分化を抑制し骨芽細胞への分化を誘導した。次に、BMP-2で骨芽細胞への分化が誘導されない線維芽細胞にMyoDを導入したところ、この細胞でもBMP-2は筋細胞への分化を抑制することが明らかとなった。さらに、免疫染色およびゲルシフトアッセイの結果より、BMP-2処理群でも、MyoDやmyogeninはDNA結合能を保持したまま核内に存在していることが判明した。 以上の結果は、BMP-2による筋細胞への分化の抑制には骨芽細胞への分化誘導が必須ではないこと、BMP-2はMyoDやmyogeninタンパク質の活性を阻害していることを示している。さらに、BMP-2処理群でもMyoDやmyogeninのDNA結合能が阻害されなかったことから、BMP-2はMyoDやmyogeninによる転写の活性化に必要な他の因子を阻害する可能性が示唆された。
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