研究概要 |
矯正治療時のメカニカルストレスと歯の移動に伴い歯槽骨と歯根周囲組織の細胞活性が変化を生じ、骨代謝に関与する多くのサイトカインが周辺細胞より生成し、その変化が歯肉溝滲出液(GCF)中に反映されることが予想できる。本研究はヒトGCF中サイトカインを二次元ゲル電気泳動法、Western blot法およびELISA法により多面的分析を行ない、ヒトでの歯の移動に伴うサイトカインの関与について検討を行なった[方法]上下顎左右第一小臼歯抜歯例8名を研究対象とした。遠心移動を行なう上顎犬歯を実験歯、反対側の犬歯ならびに実験歯と同側の下顎犬歯を対照歯として、治療開始後(0,1,24,168hr)のGCFをペリオペ-パ-にて経時的に採取し、タンパク質を抽出した。マイクロニ次元ゲル電気泳動とWestern blotは既報にて行ない、GCFタンパク質の分析を行なった。サイトカインの定量は、Interleukin(IL)-1 β, IL-6, EGF, TNF-α, TGF-β_1ならびにβ_2microglobulin(β_2-MG)に関し、Sandwich ELISAにて定量を行なった。[結果と考察](1)GCF中のタンパク質の二次元展開像は24hrにて個々のタンパクスポットのdensityは増大したが、スポットパターンに経時的変化は見られなかった。(2)実験歯のGCF中のIL-1β, IL-6, EGF, TNF-α, TGF-β_1およびβ_2MG量は、移動開始後24hrで対照歯より約3倍まで統計的有意差をもって上昇を示した。一方タンパク質量は実験歯で徐々に上昇し168hrでピークを示したが対照歯と有意な差は認められなかった。測定したサイトカインはin vitroで骨吸収・骨形成に深く関与するmediatorであり、これらが、同様の一過性の上昇を示したことから、本実験はヒトの歯の移動に伴う骨のリモデリングに、測定したサイトカインが深く関与すると結論した。本研究の一部はJ. Dent. Res(1996)Uematsu et al. , in pressおよび 2nd International Conference on the Biological mechanism of tooth movement and craniofacial adaptation, Boston, USA. 1995にて報告した。
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