研究概要 |
屠殺ブタより摘出した心臓より,冠動脈を剖出しブタ冠動脈平滑筋標本を作製した.まず,そのブタ冠動脈平滑筋輪状標本に対し蛍光カルシウム指示薬Fura-2/AMを負荷する場合の負荷条件(濃度,温度,時間)について検討し,10μM Fura-2/AMを37℃,暗所にて2時間負荷を行うこととした.次に,高カリウム溶液を標本に投与し収縮張力および細胞内カルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_i)変化の同時測定を行った.収縮張力は張力トランスデューサーにより等尺的に測定した.[Ca^<2+>]_iについてはFura-2を負荷した標本に二波長の励起光を照射しそれにより発する組織の蛍光強度を測定し,その二波長励起蛍光強度比の変化を[Ca^<2+>]_i変化の指標とした.実験の開始時,おのおのの標本に対しまず90mMKCl投与を行い,それにより得られた収縮張力および蛍光強度比の変化量を測定し,それぞれの標本における基準値(100%)とした. 高カリウム(50mMKCl)投与による脱分極刺激により,ブタ冠動脈平滑筋輪状標本に,[Ca^<2+>]_iの増加を伴う収縮張力の増大が見られた.さらにその収縮の持続中に標本に10^<-4>Mミダゾラムを投与したところ,収縮張力および[Ca^<2+>]_iの減少を認めた.ついでミダゾラムの投与を中断することにより張力,[Ca^<2+>]_iが回復した.このことより,ミダゾラムは,ブタ冠動脈平滑筋においては,脱分極刺激による平滑筋収縮に対して[Ca^<2+>]_i減少を伴う可逆的な抑制作用を持つことが明らかになった.現在,ミダゾラムの濃度による抑制作用の変化,他の収縮刺激薬(ノルアドレナリン,アドレナリン)に対する作用,ミダゾラム以外の静脈麻酔薬(プロポフォール,アネキセート)の作用について検討中である.
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