VX2癌細胞浮遊液をウサギ左側舌辺縁の筋層内に移植後、3、7、14、21日目に屠殺し、移植舌癌の浸潤状態と頚部リンパ節における癌の転移状態および細胞反応(リンパ洞の大型単核細胞の増生、傍皮質の肥厚、胚中心の過形成)を組織学的に観察した。 1.移植舌癌は経日的に増殖し、移植後14日目以降には舌中隔を破壊し反対側に及ぶ腫瘍も観察された。 2.頚部リンパ節転移は移植後14日目以降に認められ、経日的に浸潤増殖した。なお、深頚リンパ節においては、反対側にも転移が認められた。 3.頚部リンパ節の細胞反応は転移形成が認められる以前より観察され、経日的に変化した。リンパ洞の大型単核細胞の増生と傍皮質の肥厚は移植後の早期からみられ、胚中心の過形成は移植後の後期に顕著であった。 4.リンパ節の細胞反応は移植後の同一時期で比較すると、舌からの遠位のリンパ節ほど微弱であった。 以上の結果から、移植舌癌の増殖にともなってリンパ節の細胞反応は経日的に一定のパターンを示しながら変化するので、リンパ行性転移の進行状況を把握する指標になり得ると思われた。また、転移巣が組織学的に発見されないときでも、著しい細胞反応が認められるリンパ節では、癌細胞によって強い反応性変化を示している可能性があり、潜在性リンパ節転移を診断する一助にもなり得ることから、臨床応用への可能性が示唆された。 今後は、免疫組織化学染色を施し頚部リンパ節を観察することにより、リンパ節の細胞反応と標識されたT細胞やB細胞の関連性を検討し、新たなリンパ節転移評価法の確立を目標とする。
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