副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨や腎などの標的細胞上のPTH/PTHrP受容体に結合した後、シグナルを導入して骨吸収などの生理作用を発現する。生理的に機能する細胞表面のこの受容体量は、血中PTH濃度により制御されており、副甲状腺機能亢進症などにおける高血中PTH状態によりdown-regulateされることが知られている。この受容体の制御が遺伝子発現のレベルで行われているかどうかを研究した。PTH/PTHrP受容体mRNA量測定のために、ラット腎から抽出したtotalRNAを用いRT-PCR法でPTH/PTHrP受容体cDNA断片(0.7kb)を作製した。これをプローブとしてノーザンブロットを行い、Cyclophilin mRNA量で補正することによりPTH/PTHrP受容体mRNA量を算出した。血中CaとP濃度はいずれも比色法で、PTH濃度はImmunoradiometric Assayで、1.25(OH)_2D濃度はRadio Receptor Assayで測定した。コントロールラットにおけるPTH/PTHrP受容体mRNAのTissue Distributionを検討したところ、腎でその発現量が最も高く、頭蓋骨と長管骨で比較的高い発現量が認められた。骨のPTH/PTHrP受容体mRNAレベルは絶食2日後より約3倍に上昇し、摂食の再開により絶食前のレベルに戻った。腎のmRNA量は、絶食1日後に約2倍に上昇し、その後はほぼ一定となり、摂食の再開でコントロールレベルとなった。PTH濃度は、絶食によってわずかではあるが有意に上昇し、再摂食により低下してほぼ絶食前のレベルに戻った。絶食ラットにTPTXを施すと、血中Ca濃度及びPTH濃度の著しい低下がみられたにもかかわらず、骨および腎のPTH/PTHrP受容体mRNA量はSham群とほぼ同じレベルであった。以上のことより、in vivoにおけるPTH/PTHrP受容体mRNAレベルの制御には、血中PTHレベルよるむしろ絶食により影響を受けるホルモンなど全身性因子の関与が示唆された。現在、PTH/PTHrP受容体をタンパク質レベルで定量するために、受容体抗体を作製し受容体量の測定系を開発中である。
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