ラット胎児頭蓋冠由来骨原性細胞(RC細胞)の培養系を用い、骨芽細胞の分化とレチノイン酸受容体の発現との関連について検索した。RC細胞は培養とともに骨芽細胞様細胞へと分化することが知られているので、RC細胞におけるレチノイン酸受容体(RAR)の発現を種々の培養時期において調べた。また骨芽細胞の指標としてアルカリフォスファターゼ(ALP)、オステオポンチン(OPN)、オステオカルシン(OCN)の発現も同時に調べた。それぞれの発現量は、Northern Blot分析によるmRNA量で評価した。その結果、ALPの発現量は培養とともに増加して12-15日目に最大となり、OPN、OCNの発現量は石灰化骨様コロニーの形成と並行して10日目頃より増加し20日目頃に最大となった。しかし、培養期間を通じてRARの発現量には大きな変化が見られなかった。次に、培養初期のRC細胞に24時間レチノイン酸(10^<-8>M)を作用させると、ALPの発現量は減少し、OPNの発現量は増加した。培養後期では、同様のレチノイン酸処理によってALP、OPNの発現量は変化しなかった。一方、RARの発現量は、どの培養時期においても、レチノイン酸処理によって大きな変化が見られなかった。 以上の結果は、骨芽細胞の分化によるレチノイン酸作用の変化が、RARの発現量に由来するものではなく、他のメカニズムによるものであることを示唆している。そこで今後は、RARの共役因子であるレチノイドX受容体(RXR)の挙動についても検索する予定である。
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