歯周炎の進行過程において歯周組織は破壊され、歯周組織を構成する細胞および炎症組織に浸潤する炎症細胞は死滅する。これらの死は壊死(ネクローシス)と考えられてきたが、歯周組織を構成する細胞は炎症細胞の浸潤によるシグナルで、また炎症細胞はそれ自体のプログラムで自己消去する細胞死(アポトーシス)によると考えられる。そこで、歯周組織を構成する細胞および炎症浸潤細胞のどの細胞にアポトーシスが誘導されているか、また、DNA電気泳動により炎症歯肉組織において、アポトーシスに伴うクロマチンDNAのヌクレオソーム単位の断片化がどの程度進んでいるかを検索した。 歯周炎罹患歯肉においてnick end labeling法、アポトーシス関連抗Le^Y抗体による組織学的検索を行ったところ、単核白血球、上皮細胞、線維芽細胞、多形核白血球にアポトーシスが誘導されていることが示唆された。また、DNAプローブであるHoechst33258による検索を行ったところ、アポトーシスの特徴である核クロマチンの凝縮と断片化が認められた。また、試料からDNAを抽出した後、アガロースゲル電気泳動を行いDNA断片化の検索を試みたが、明らかな約180塩基対のDNAラダーパターンは確認できなかった。次に試料より調製した細胞のアガロース浮遊液にティアドロップアッセイを行いDNA断片化の検索を行った結果、アポトーシスが誘導されている細胞に見られる“comet"様の像が少数であるが観察された。 以上のことより炎症歯肉においてアポトーシスが様々な細胞において誘導されていることが明らかであるが、アポトーシスに伴うクロマチンDNAのヌクレオソーム単位の断片化がどの程度進んでいるかについては不明である。
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