今回、粘膜の機械的刺激に対する抵抗力に糖尿病が及ぼす影響を検索する目的で、ストレプトゾトシンを用いた実験的糖尿病ラットの口蓋粘膜のコラーゲン線維構築を走査電子顕微鏡(以下、SEM)を用いて観察した。実験には生後10週齢の雌性SDラットを用いた。糖尿病の発症STZのにより、これを実験群とした。10週間飼育後、実験群の空腹時血糖を確認したのちに屠殺、観察試料とし、SEMによって観察した。固有層表面のコラーゲン線維網には上皮方向へ突出した微細な隆起構造(以下、MR)が無数に形成されていた。実験群では、対照群に比べてMRの数が少なく、実験群では固有層表面のコラーゲン線維網が疎で、コラーゲン線維の収束も弱く、MRの形態も単純化していた。このような構造的変化は、口蓋前方に比べて口蓋後方でより顕著に認められた。一方、抜歯窩における観察では、正常抜歯窩内では、抜歯後4日頃よりコラーゲン線維網に特徴的な多孔性の構造を示す部分が認められ、それらの線維束の一部で石灰化小球が出現しコラーゲン線維に付着することにより、石灰化が開始している像が観察される。その後、経日的に多孔性を示す部分は増加し、石灰化小球の量、線維への付着の程度も増し、明瞭な線維骨として観察されるようになる。実験群においては、コラーゲン線維の新生、コラーゲン線維網への多孔性部分の出現、およびその拡大などの新生線維骨形成の全ての段階における遅延が認められた。今回、観察された実験群におけるこれらの所見は、我々が以前報告した老齢ラット口蓋粘膜MRの形態の変化や実験的糖尿病ラット口蓋粘膜の生化学的データと一致していた。 以上の研究内容の要旨はは、第73回IADR General Session & Exhibition(Singapore)^*、ならびに第6回日本老年歯科医学会大会(大阪)において発表した。 ^*Collagen fiber architecture in palatal mucosa of experimental diabetic rats. J Dental Research 1995; 74(Special issue):454
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