研究概要 |
口唇口蓋裂患者は出生直後より,健常乳児と異なる哺乳様式を取らざるを得ないが,乳児期の哺乳様式の差異がその後の咀嚼器官の発達に影響を及ぼすことが基礎研究や健常児では明らかになってきている。一方,口唇口蓋裂児ではその影響について今だ検討されていない。今回我々は,当科受診し保護者の了承の得られた口唇口蓋裂児に対して、当科所有のポリグラフシステムRM-6000を用いて,今後の研究のデータ収集のための予備実験をおこなった。 実験方法は,当科受診した口唇口蓋裂児に対し,当科で使用している口蓋裂用乳首を用いて哺乳指導を行ったあと,一週間後に再診させ、保護者に実験の内容について説明し了承を得た上で,保護者に抱負された状態での哺乳時の筋電図を採取した。筋電図を採取する部位は,咬筋,側頭筋,顎舌骨筋群とした。貼付部位は初回計測時に触診にて決定し,後日同部位で計測可能なように耳珠,外眼角,口角等の基準店を設定し,各点からの距離を計測した。 筋電図採取のための電極は皿電極,日本光電社製ビトロード(P-150,A-150)の3種類を用い比較した。なお,筋電図採取前には患児の皮膚を皮膚前処理用スキンピュアにて清拭し日本光電社製ホルターバンにて固定した。筋電図の基線が安定した後,前回受診時に指導した乳首を用いて自由に哺乳を行わせた。各電極とも開始直後は良好な記録が得られたが,皿電極は時間の経過とともに顎舌骨筋群測定部位の接触が不良となり,安定した記録が得られなかった。一方ビトロード2種については概ね安定した記録が得られた。同患児について日を改めて再度記録を行ったが,初回と同じ結果であった。 今後はビトロードを用いて咀嚼筋筋電図を採取し,あわせてHotz床装着時の口唇圧を測定する方法を確立していく予定である。
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