研究概要 |
悪性腫瘍に対する化学療法の治療成績は向上しつつあるが、抗癌剤の効果は腫瘍細胞の種類、その分化程度など種々の要因に影響されるため、薬剤の選択、予後の判定等苦慮する症例も多く、簡便で端的に反映する抗癌剤効果判定法の確立が望まれている。近年、活発に行われているアポトーシス研究においてある種の抗癌剤が、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導することにより抗腫瘍効果を発揮することが報告されている。頭頚部悪性腫瘍において扁平上皮癌がその大半を占めている。そこで我々は、当科で樹立したヒト扁平上皮癌細胞(NA細胞)を用い、CBDCA、5-FUによってアポトーシスが誘導されるかどうかを検討した。ヘキスト33258核染色による形態学的な検討、抽出したDNAの1%アガロース電気泳動によるDNA ladder patternの検索、二重抗体法による培養上清中の断片化DNAの検索を行ったところ、CBDCA、5-FU両者ともNA細胞にアポトーシスを誘導した。またアポトーシス関連遺伝子として知られているc-mycの発現に与える抗癌剤の影響をnorthern blot法にて検索したところ、CBDCA, 5-FU両者ともc-myc mRNAの発現を抑制していた。以上のことからCBDCA、5-FUともにヒト扁平上皮癌細胞にアポトーシスを誘導することが強く示唆され、このアポトーシスを抗癌剤効果判定の指標とすれば、表在癌である頭頚部悪性腫瘍から得られるわずかな検体から薬剤の選択、予後の判定等臨床上貴重な情報が得られる可能性を示唆する結果となった。
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