未治療の扁平紅色苔癬におけるAmphotericin Bantifungul agents(Fungizonesyrup)とsteroid軟膏を用いた従来の治療法にBeta-caroteneを加えてその治療効果を判定し、Beta-caroteneの扁平紅色苔癬の治療効果と再発防止効果について評価することを目的として治療研究を行っている。 1996年3月12日の時点で治療研究に同意を得ることのできた16例(女性15例、男性1例)の扁平紅色苔癬症例に対して、Beta-caroteneの内服および抗真菌剤とステロイドの局所投与を行っている。今までに脱落症例が2人あり、評価可能症例は14人である。治療期間は平均で36週間であり(最長68週間、最短12週間)、本治療法による副作用は、重篤なものは認められていないが、著明な橙皮症が4例に認められ、いずれもBeta-carotene内服の中断あるいは減量により症状の軽快をみた。本治療法により、疾患の完全消失を認められたのは1例のみであり、改善傾向を示している症例は6例、変化のない症例が6例であり、1例に症状の悪化が認められた。また、経過中に症状の再発を来たした症例が6例に認められた。 治療開始前のビタミンB_1B_2B_<12>Cは全症例において正常値を示していた。カロテン類の測定は現時点では10例において終了しており、Beta-carotene、alpha-carotene、lycopene、Zeaxanthin/lutein、cryptoxanthin、retinol、alpha-tocopherolの平均値はそれぞれ43.70、5.99、12.65、63.81、31.08、63.36、818.88μg/dlであった。これらの値は、我々が行った疫学調査における粘膜疾患保有者の値と近似しており、本疾患保有者が低Beta-caroteneを示していることを裏付けた。 現時点では、当初の中間解析を行う時期を20例と設定しているため詳細な検討はできないが、Beta-carotene単独投与では期待された効果が得られておらず、今後はビタミンC、Eを加えた内服治療の治療研究に発展させていくつもりである。
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