乳歯の感染根管治療は、その形態学的特徴から難しい。また、X線被爆の問題や、低年齢児では、X線撮影が困難な場合もあり撮影できないこともある。最近様々な分野で用いられてきている超音波診断法は、放射線被爆を伴わずに診断可能であるが、乳歯の歯内療法の分野ではまだ用いられていない。特に、永久歯と違い乳歯では慢性根尖性歯周炎から、根分岐病変を併発し、歯肉膿瘍を形成することが多い。 今回、昭和大学歯科病院小児歯科外来患者の内、乳臼歯部に歯髄炎を有する者10名、同部位に根尖性歯周炎から歯肉膿瘍を形成した者10名を対象に保護者の同意を得、X線写真、および眼科様に開発されたNIDEK CO. L. T. D. 10MHZ OPHTHLMIC BIOMETORY Probeにて超音波検査法を用いて診査を行った。 結果:歯肉膿瘍を形成した者のX線写真で直径2mmの病巣を有していたものの歯肉膿瘍形成部に超音波診査を行ったところ、深度9mmもあった。根管治療の際に超音波診断を行ったところ、徐々に病巣が浅くなるのが観察された。しかし、X線写真の透過像よりも歯肉膿瘍深度深かったため、根管治療の回数も10回となったが、根管治療中、超音波診断で歯肉膿瘍深度が浅くなったのが観察されたので感染根管治療にて保存を計った。しかし、X線写真で根分岐の透過像が直径7mmあり、また超音波診断で10mmの深度があるものは抜歯症例となるものが多かった。 歯肉膿瘍を有する慢性根尖性歯周炎の診断、および治療経過を診断していく上で、超音波診断法は有効と思われる。今後、さらに症例を増やし、治療の診断基準や、予後観察等の検討を行う予定である。
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