イミンへの求核付加反応を利用したアミンの不斉合成法の開発の検討として、分子内アルキル化反応であるPictet-Spengler反応による光学活性な1-置換-テトラヒドロ-β-カルボリンの合成を検討した。 はじめに、N_bに不斉補助基としてα-フェニルエチル基を有する光学活性トリプタミンと各種アルデヒドとの不斉Pictet-Spengler反応を検討した。その結果、還流ベンゼン中トリフルオロ酢酸を触媒として用いたところ、ベンツアルデヒドとの反応において、最も良いジアステレオ選択(86:14)が観測された。さらに、α-ナフチルエチル基を不斉補助基として用いて反応行ったところ最高93:7までジアステレオ選択性が向上した。一方、これらの不斉補助基を酢酸エチル中20%水酸化パラジウム触媒を用いて加水素分解によって除去し、光学活性な1-置換-テトラヒドロ-β-カルボリンを得た。また、NMR実験、エネルギー計算等を行い、この反応のメカニズム(選択性)について検討を行った。 つぎに、ヒドロキシトリプタミンとアルデヒドとのエナンチオ選択的Pictet-Spengler反応を種々のルイス酸を用いて検討した。N-ベンジリデントリプタミンN-オキシドをキラルルイス酸としてジイソピノカンフェイルクロロボランを用い室温で反応させたところ、光学活性な2-ヒドロキシ-1-置換-テトラヒドロ-β-カルボリン(25%ee)が収率良く得られた。この反応の溶媒効果を検討したところ塩化メチレンが最も良い溶媒であった。さらに、温度効果を検討し、塩化メチレン中-96℃で反応を行うことにより光学純度は最高88%ee(収率63%)まで向上した。得られた2-ヒドロキシ-1-置換-テトラヒドロ-β-カルボリンを、酢酸中亜鉛で還元すると高収率で1-置換-テトラヒドロ-β-カルボリンが得られた。
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