近年、蛋白質の立体構造をシミュレートするようデザインされた合成ペプチドを用いて蛋白質の機能を解明しようとする試みが行われるようになってきた。本研究では、カルシウムチャネルの膜貫通領域領域を組織化することによって、新しいタイプのチャネル拮抗薬のスクリーニング系を構築することを目指している。まず、互いにアミノ酸配列の異なる4本のヘリックスを導入可能であるようなペプチド性テンプレートを用いる蛋白質構造構築法、およびペプチドユニットをジスルフィドにより架橋し蛋白質の立体構造を構築する方法を新たに開発した。次いで、前者の方法を用いて血圧調整に深く関わっている電位依存性のL型カルシウムチャネルの膜電位センサー領域(S4)の組織化を試みた。Fmoc固相合成法を用いてリピートI-IVのS4に対応するペプチドユニットの合成を行った後、これらを選択的にテンプレートに導入することを試みたが、これらのペプチドユニットが不溶性のため、テンプレートにリピートIIとIIIの2本のペプチドユニットを導入した段階でHPLCで精製不能となり、目的物を得ることは出来なかった。次いで、カルシウムチャネルのイオン選択性を司るとされているS5-S6リンカー部位の組織化を試みた。やはりFmoc固相合成法でこの部位に対応するペプチドを合成し、現在、精製を行っている。また、チャネル活性の比較のため、ナトリウムチャネル、カリウムチャネルに対応するペプチドに関しても、同様のモデルを構築中である。これらの、チャネル活性に関して今後検討していく予定である。
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