研究概要 |
私はPinheyらによって開発された有機鉛(IV)トリアセタートによるβ-ジカルボニル化合物のα-アルケニル化及びα-アルキニル化を機軸とし、種々の有用変換反応の開発を行ってきた。そしてこれまでにβ-ケトベンジルエステルのα-アルケニル化とRaney Niを用いる脱ベンジルオキシカルボニル化により、アルケニル基の導入位置及び立体化学を制御したα-アルケニルケトン合成を達成した。またβ-ケトプレニルエステルのα-アルキニル化とLindlar還元、Pd-HCO_2HNEt_3による脱アリルオキシカルボニル化の組み合わせでα-(Z)-アルケニルケトンの改良合成にも成功している。そこで今年度は、α-アルキニルケトンの選択的合成を目標とした。 まずアルキニル鉛(IV)トリアセタートを用いてβ-ケトアリルエステルのα位にアルキニル基を導入後、Pd-HCO_2HNEt_3によってエステル部を除去したところα-アレニルケトンが主生成物として得られ、目的の変換を達成することができなかった。これはα-アルキニルケトンが脱アリルオキシカルボニル化の条件下で容易にα-アレニルケトンに異性化するためと判明したので、アルキニル基を保護してかアリルエステルを除去する方針に切り換えた。すなわちα-アルキニル-β-ケトアリルエステルの三重結合をコバルトカルボニル錯体とした後、Pd-HCO_2HNEt_3による脱アリルオキシカルボニル化とCANを用いた脱保護を行い、β-ケトアリルエステルからα-アルキニルケトンの選択的合成に成功した。さらに本法を効果的に応用し、循環器疾患の治療薬として有望視されているPGI_2安定炭素類縁体イソカルバサイクリンの誘導体で、ω鎖に三重結合を有する13,14-デヒドロイソカルバサイクリンも合成した。その血小板凝集抑制作用については現在検討中である。
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