アデニンを優先的に認識するリボ核酸分解酵素RNase U_2と3′-AMP及び2′-AMPとの複合体結晶を酢酸カルシウム存在下ポリエチレングリコール8000から得た。RNase U_2と3′-AMPの複合体結晶は空間群P2_1、格子定数はa=39.99Å、b=40.10Å、c=38.42Å、β=124.14、RNase U_2と2′-AMPの複合体結晶は空間群P2_1、a=39.83Å、b=36.59Å、c=36.73Å、β=104.25°である。分子置換法により初期構造を決定し、分解嚢1.8ÅでR因子がそれぞれ0.164、0.185まで結晶学的構造精密化を進めた。3′-AMPはC_<3′>-endo-synのコンホメーシンでRNase U_2に結合している。塩基結合部近傍のAla 47からGlu 49は3_<10>-ヘリックスを形成しており、その両側に位置するTry 44主鎖、Glu 49側鎖がアデニン塩基と計4個の水素結合を形成してアデニン塩基を認識している。リン酸基はTry 39、Glu 62、Arg 85、His 101と、His 41のN_<δ1>原子はリホ-スO_<2′>と水素結合し、これらのアミノ酸残基が触媒部位を形成すると考えられる。2′-AMPのリン酸基は触媒部位に、アデニン塩基はHis 101のイミダゾール環にスタッキングしている。アデニン塩基部分で水素結合が形成されている3′-AMPの結合様式はプリン特異的なRNase U_2が切断されるホスホジエステル結合の5′側RNA鎖中のアデノシンの結合様式を、2′-AMPは切断されるホスホジエステル結合の5′側の塩基の結合様式を反映すると考えられる。3_<10>-ヘリックスをもつ塩基認識部位の構造は、RNase U_2で初めて発見されたものであり、プリン特異的RNaseに特有の新規構造モチーフを考えられる。また、RNase U_2と3′-AMPの複合体結晶でみられたHis 41のコンフォメーションは、このHisが他の一次構造の相同性を持つRNaseの対応するHisとは異なるコンフォメーションで触媒反応に関与することを示している。
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