動脈硬化巣は、マクロファージが、コレステロールエステルを蓄積し、泡沫細胞化することから始まる。マクロファージが、コレステロールエステルを蓄積する原因として、脂質球中のコレステロールエステルを加水分解する中性コレステロールエステラーゼ活性が減少することを見出した。そこで、マクロファージの中性コレステロールエステラーゼを精製しその性質について検討した。 まず、ウサギの肺胞マクロファージよりサイトゾル画分を調整し、ゲル濾過カラム(sephacrylS-200)、次いで陰イオン交換カラム(DEAE-Toyopearl 650M)にかけた。この部分精製標品を用いて基室特異性を調べたところエステラーゼ活性を示したが、リパーゼ活性化を有さなかった。このことから、マクロファージの中性コレステロールエステラーゼは脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼと同様であるという説が否定された。また、膵臓から分泌される中性コレステロールエステラーゼはタウロコール酸を添加すると活性化されるのに対し肺胞マクロファージ中性コレステロールエステラーゼの活性は低下した。種々のリン脂質を用いて基質を調整し酵素活性を測定すると、酸性の強いリン脂質、すなわち負電荷の大きいリン脂質ほど中性コレステロールエステラーゼ活性は高かった。これより本酵素はすでにクローニングされている膵臓由来のものとは性質を異にしていることが分かった。また、一価と二価のカチオンの影響により中性コレステロールエステラーゼ活性は阻害された。また、粒子径の異なる基質で活性を比較した結果、粒子径の小さな基質のほうが活性が高かった。 以上より、肺胞マクロファージ由来中性コレステロールエステラーゼは膵臓から分泌される由来中性コレステロールエステラーゼや脂肪細胞由来ホルモン感受性リパーゼと活性調節機構が異なり、基質となるリポソームにある負電荷を認識していることが示唆された。
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