1)糖タンパク質の精製および部分アミノ酸配列の決定 凍結乾燥したイナゴ頭部を、クロロホルム/メタノールで脱脂後、0.9%塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝液(PBS)で糖タンパク質を抽出した。この抽出物を材料に、ウエスタンブロットにおける抗HRP抗体との反応性を指標として、硫安分画、ConAカラム、抗HRP抗体を固定化したアフィニティーカラムにかけ、最終的に調製用電気泳動で分画し、43kDaおよび35kDaの糖タンパク質を精製した。ペプチドシークエンサーにより、この35kDaの糖タンパク質のアミノ末端より20残基のアミノ酸配列を決定した。またこの35kDa糖タンパク質をリシルエンドペプチダーゼで消化後、逆相HPLCで分離したペプチド画分についてアミノ酸配列を決定した。 2)糖鎖の精製および構造決定 精製した43kDa糖タンパク質をヒドラジン分解で糖鎖を切り出し、還元末端を2-アミノピリジンと反応させピリジルアミノ化(PA化)することにより蛍光標識した。このPA化糖鎖を、逆相カラム、アミドカラムを用いて分画し、数種の画分を得た。そのうちの主要な画分が、HPLCにおいてHRP糖鎖とよく似た挙動を示したので、この画分が抗HRP抗体と反応性を示す糖鎖であると思われた。そこでこの画分を、イオンスプレー式質量分析計を用い、MSおよびMS/MS分析を行った結果、HRP糖鎖と同じパターンを示した。また、この糖鎖を600MHz1H-NMRで測定した結果、HRP糖鎖と同じパターンを示した。このことより、イナゴの神経系に発現している、抗HRP抗体と反応性を示す糖鎖は、HRP糖鎖と同じ構造であることが示唆された。
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