1.PACAP受容体およびVIP受容体キメラの作製 キメラ受容体は、両受容体のエキソンとイントロンの境界部分で入れ替えた構造とし、N末細胞外領域からC末方向に、順に5か所を境界点に選択した。キメラ受容体cDNAは、リコンビナントPCR法により作製した。また得られたcDNAに変異がないことを、DNAシークエンス解析により確認した。 2.キメラ受容体の機能 作製したcDNAおよび野生型受容体cDNAをCOS7細胞にDEAE-デキストラン法により一過性に発現させ、粗細胞膜画分に対する[125-I]PACAP-27結合能を測定した。さらに、各受容体の発現細胞を各ペプチドホルモンで刺激した後、細胞内cyclic AMP産生を測定することにより、リガンド結合の特異性を調べた。なお作製した全てのキメラ受容体は、リガンド結合と細胞内cyclic AMP産生の最大反応において野生型PACAP受容体およびVIP受容体と同等の活性を有しており、受容体としての機能は完全に保持されていた。 3.その結果次の各点が明らかになった。 (1)PACAP受容体の結合にもっとも大きく関与する部分は、N末細胞外領域の一部に存在する。(2)VIP受容体によるVIPの結合の決定にもN末細胞外領域が大きく関与している。(3)一方、C末側の細胞外ループや細胞膜貫通領域にもPACAPあるいはVIPが認識される部分が存在する。(4)受容体のリガンド結合と細胞内情報伝達系の活性化に関与する領域が、必ずしも一致しない場合がある。 4.今後、本研究の結果特定されたリガンド結合に関与する領域において、点突然変異の導入等によりさらに詳細な解析を進めて行く予定である。
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