1.簡便な酵素活性測定系の確立 反応は、酵素源とスフィンゴシン塩基および放射標識アシルCoAを混合し行った。スフィンゴシン塩基としてはSphingosineとSphinganineを、アシルCoAとしてPalmitoy-CoAとStearoyl-CoAを用いた。生成産物を分離するために、従来のシリカゲル(順相)薄層クロマトグラフィーに替え、C18逆相薄層クロマトグラフィーを用いた。また反応スケールを数μlとすることにより、反応液を直接スポットすることが可能となり、脂質の有機溶媒による抽出という繁雑な過程が簡略化された。生成産物の放射活性をイメージングアナライザーで測定した。 2.酵素精製の材料の検討 酵素活性測定系の検討をする際、増殖が盛んな細胞すなわち分裂が盛んな細胞ほど活性が高いことを見いだした。このため、活性が高い状態の細胞を酵素源とすることし、同調培養が可能なHeLa細胞を用いた。まずHeLa細胞のアシルトランスフェラーゼ活性を測定するとPalmitoyl-CoAとStearoyl-CoAをSphingosineとSphinganineのいずれと組み合わせてもアシル化反応が観察されたが、前者はSphingosine、後者はSphinganineの方が反応は強く、前者の方が後者よりも反応は強かった。これらの活性はすべて膜画分に存在していたが、単一の酵素によるのか複数の酵素によるのかさらに検討する必要がある。次に、細胞分裂周期における酵素活性の変動を測定した。細胞分裂周期のうちM期とG1期では活性がほとんど検出されなかったのに対し、S期とG2期ではその約10倍に上昇していることが明かとなり、細胞分裂の準備段階で本酵素活性が亢進しているものと思われた。 現在、S期に同調した細胞を酵素源として膜からの可溶化条件を検討中である。
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