本研究の目的は海洋無脊椎動物タツナミガイの卵白腺に新たに見いだした、DNA切断作用を有する抗腫瘍・抗真菌活性の精製と構造解析、作用機構の解明である。よってまず活性物質の精製を試みた。 活性物質は直接の細胞毒性以外に、in vitroでプラスミドDNA切断作用を示すので、これを指標に以下の精製方法の検討を行った。まず材料のタツナミガイ卵白腺をリン酸バッファーとホモジナイズ、遠心し、上清に活性を得た。続いて硫酸アンモニウムを用いた段階的な塩析によって活性を50%から100%沈殿画分に回収した。予備検討で活性を吸着画分として回収できることが見込まれていたクロマトグラフィーのうち、MONO-Qカラム及びハイドロキシアパタイトカラムをHPLCシステムに接続して分画を行った。MONO-Qカラムでは0.5から1モルNaClで活性が溶出し、ハイドロキシアパタイトカラムではリン酸濃度400から500ミリモルで溶出した。上記の精製ステップを経ることにより、活性物質は卵白腺中の主要な抗腫瘍蛋白質ドラベラニンAと分離された。また比活性は、粗抽出画分100μg/ml程度であったが、数μg/mlまで上昇した。SDSポリアクリルアミド電気泳動では分子量100000以上の領域にいくつかのバンドがみられ、低分子のものは含まないことが観察された。次のステップとしてゲル濾過及びMONO-Sカラムクロマトグラフィーの検討を行っているところであり、精製完了次第N末端アミノ酸配列解析、cDNAクローニングと作用機構解析を行う。
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