研究概要 |
刺激応答細胞の細胞質に存在するホスホリパーゼA_2(PLA_2)は,刺激に伴うアラキドン酸遊離反応を担うと考えられており,プロテインキナーゼによるリン酸化と,細胞内で増大したCa^<2+>による細胞膜への移行により,膜リン脂質を加水分解すると予想されているが,本研究では,細胞質PLA_2の細胞膜での水解活性発現にさらに活性型GTP結合タンパク質が関与する可能性を血小板を用いて検討した。 ウサギ血小板をトロンビンで刺激するとアラキドン酸遊離反応が誘起されるが,トロンボキサンA_2のアナログであるU46619での刺激ではこの反応はわずかしか見られなかった。しかし,これら刺激下血小板の細胞質PLA_2の比活性は,いずれの刺激下でも未刺激の場合に比し有意にかつ同程度に上昇していた。また,Ca^<2+>イオノホアで各刺激下での細胞内Ca^<2+>動員量を同程度にした条件下では,トロンビン刺激下でのアラキドン酸遊離はイオノホアにより相乗的に増大したが,U46619刺激下ではこの効果は見られなかった。これらの結果は,細胞質PLA_2が膜リン脂質を水解するためには,リン酸化による酵素活性の上昇やCa^<2+>動員後の酵素の膜への移行のみでは不十分であることを示唆している。そこで,活性型GTP結合タンパク質が本酵素の水解活性発現にさらに関与する可能性を検討するために,その活性下剤であるNaFおよびAlCl_3存在下に血小板をU46619で刺激したところ相乗的なアラキドン酸遊離が誘起された。さらに,血小板膜画分に部分精製した細胞質PLA_2を作用されたときのアラキドン酸遊離もGTP結合タンパク質の活性化剤であるGTPγSの濃度依存的に増大した。 本研究の成果から,細胞質PLA_2はリン酸化によりその活性が上昇した後,細胞内で増大したCa^<2+>により細胞膜へ移行するが,細胞質PLA_2が細胞膜上でその水解活性を発現するためには,さらに活性型GTP結合タンパク質による調節が必要である可能性が示唆された。
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