芳香族多環炭化水素化合物の3-メチルコランスレン(3-MC)によるハムスター肝におけるシトクロームP4502A8(CYP2A8)分子種の転写調節機構を解明することを目的として研究を行った結果、次に示す様な結果を得た。 1. P450の誘導能を有する培養細胞系は限られており、特にCYP2A8を誘導する培養細胞系はこれまでに報告されていない、そこで、まず初めにハムスター初代培養肝細胞を用いて、種々の培養条件を検討した結果、無血清培養条件下で3-MCによるCYP2A8誘導能を有する培養細胞系を確立することができた。 2. CYP2A8のゲノムDNA上の転写開始点を決定した。さらに、ゲノムDNAのクローニングを行い、転写開始点より約1000bpまでの上流域のゲノムDNAの構造解析を行った。その結果、従来から3-MCによって誘導されることが知られているCYP1A1の転写調節領域と相同性を示す領域(Dioxin response element)は存在しないことがわかった。このことは、CYP1A1とCYP2A8の転写調節機構が明らかに異なっていることを示していた。 3. 転写調節領域の特定のためのレポータープラスミドを初代培養ハムスター肝細胞に導入する条件を、ルシフェラーゼ発現ベクターを用いて種々検討した。その結果、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、リポフェクション法等に比べてエレクトロポレーション法が効率よくベクターを細胞に導入できることがわかった。
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