研究概要 |
心筋細胞内Ca^<2+>シグナリングにおいて重要であるリアノジン受容体とその調節因子に注目し、ジギタリス製剤との関連を分子レベルで解析し、ジギタリス製剤の作用機序を新たに見直すことが本研究の目的である。そこで、ジギタリス製剤がCa^<2+>放出チャンネル活性に直接的に効果を示すか否かを調べ、Na^+ポンプ以外のジギタリス受容体を検索するために真に有用と考えられるツール、すなわち光親和性標識が可能なジギタリス誘導体の合成を行った。 まず、ジギタリス製剤によるリアノジン受容体の活性変化を調べた。開口確率をモニターできる特異的リガンド・[^3H]リアノジンと心筋小胞体膜画分および精製受容体を埋め込んだプロテオリポソームを用いて、結合実験による評価を行った。その結果、ジギタリス製剤(digitoxin,digoxin)は、[^3H]リアノジン結合に全く影響を与えなかった。また、上記の標品を用いて[^3H]digoxin結合実験を行ったところ、膜画分では高・低親和性の二つ結合部位が観察されたが、精製受容体にはdigoxinは結合しなかった。これらの結果より、電気生理学実験で観察されているジギタリス製剤による本受容体活性化には、未知のモジュレーターが関与している可能性が考えられた。 そこで、このモジュレーター検索のツールとして光親和性ジギタリス誘導体を合成を行った。Digoxin糖部のcis-diolをNaIO_4により開裂させて酸化体を得、これとアミノ基を持つ光ラベル基とをシッフ塩基形成-還元による縮合を行い、目的とする光親和性標体を得ることを計画した。酸化体は収率よく得られた。縮合はフェネチルアミンを用いた予備検討では、約50%の収率で達成できた。現在、ラベル基との縮合を検討中である。今後、この試薬を用い光ラベル実験を行い、ラベルタンパク質を精製・単離する予定である。
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