血漿リポタンパク(a)(Lp(a))の高値(高いLp(a)血症)は、動脈硬化症の新しい危険因子として注目されている。血漿Lp(a)濃度には幅広い固体差がみられるが、個々の固体についてはその濃度はほぼ一定で、健康な人ではその大部分はLp(a)の構成成分であるappolipoprotein(a)(apo(a))遺伝子の個体差によって決められている。apo(a)遺伝子の固体差のうち血漿Lp(a)濃度の決定に最も大きな影響を与えているのは、遺伝子サイズ(クリングル4ドメインの繰り返し回数)の固体差である。また最近、apo(a)遺伝子の5′コントロール領域の翻訳開始点から約1400bp上流にあるTTTTAリピートの繰り返し回数に固体差が存在し、白人ではTTTTAリピートの数と血漿Lp(a)濃度の間に関連がみられることが報告された。本研究は、(1)TTTTAリピートの数が日本人においても血漿Lp(a)濃度と関連があるかどうかを明らかにすること、(2)高Lp(a)血漿と関連するapo(a)対立遺伝子を同定することを目的としておこなった。 健康な成人257名を対象として、TTTTAリピートの数と血漿Lp(a)濃度の関係について調べたところ、TTTTAリピートが8回のホモ接合体のLp(a)濃度(16.8±14.8mg/dI)は、9回のホモ接合体のLp(a)濃度(7.3±3.1mg/dI)に比べて有意に高く(p=0.03)、TTTTAリピートの数が血漿Lp(a)濃度に影響を与えていることが示唆された。次に、高Lp(a)血症の発端者を含む38家系およびLp(a)濃度正常の発端者を含む30家系について、apo(a)の遺伝子サイズとTTTTAリピート数を分析した。高Lp(a)血症の発端者38名のうち、33名(87%)が遺伝子サイズA13以下のapo(a)対立遺伝子を保有していた。そのうち1名を除いた32名(84%)では遺伝子サイズの小さい方のapo(a)対立遺伝子は、8回以下のTTTTAリピートと連鎖していた。一方、Lp(a)濃度正常の発端者では、30名のうち8名(27%)が遺伝子サイズA13以下のapo(a)対立遺伝子を保有していたが、これらの遺伝子サイズA13以下のapo(a)対立遺伝子はすべて9回以上のTTTTAリピートと連鎖していた。以上のことから、血漿Lp(a)濃度の決定には、apo(a)遺伝子のサイズとTTTTAリピート数の個体差が重要であり、高Lp(a)血症の多くはTTTTAリピートが8回で遺伝子サイズの小さいapo(a)対立遺伝子が関与して発現していることが示唆された。
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