研究概要 |
内在性ベンゾジアゼピン(BDZ)様物質として知られているendozepine(diazepam binding inhibitor,DBI)の、薬物依存成立過程ならびに禁断症状発現における関与を明らかにすることを目的とし、マウス大脳皮質ならびに初代培養大脳皮質神経細胞(培養細胞)を用い、アルコール(EtOH)の単回および長期連用に伴う脳内DBI mRNA発現量とDBI含量の変化の面より検討した。その結果、EtOHの単回投与は、マウス大脳皮質におけるDBI mRNA発現量に何ら影響を示さなかったが、EtOH蒸気連続吸入により作製したアルコール依存ならびに禁断症状発現マウスのいづれにおいても、DBI mRNA発現量の増加を介した脳内DBI含量の明らかな増加が認められた。また、この増加はBDZ受容体のagonistであるflunitrazepamあるいはantagonistであるRo 15-1788の前処置により完全に消失した。さらに、同様の成績がEtOHを長期曝露した培養細胞においても認められた。なお、対照として用いたβ-actin mRNA発現量は、いづれの実験系においても何ら変化も認めなかった。したがって、アルコール依存成立過程および禁断症状発現に、DBI mRNA発現量の増加を介した脳内DBI含量の増加が関与すること、およびEtOHによるDBI生成の調節にはBDZ受容体が関与していることが明らかとなった。以上の成績より、本研究で計画した、内在性DBZ様物質の生合成調節機構の解明は、未だ統一見解の得られていない薬物依存症をはじめとする種々の疾患に伴う精神症状の変化の解明に、極めて有用な方法であると考える。
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