本研究では、これまで有線式回線を前提としていたため、実地医療に不可欠な機動性が十分確保されていなかった医療用端末(Macintosh Power Book Duo 280c)を、無線式デジタル公衆回線(NTT移動体デジタル通信網、9600ビット/秒)を介して臨床検査マルチメディア・データベースに接続することにより、文字や数値だけなく画像などを含む臨床検査データを、時と場所を選ばず検索できる携帯端末の実現性と、その画期的な機動性により得られる臨床的効果を明らかにした。 1.耐久性は問題なかったが、電話機や接続アダプタ、ケーブル類の収まりが悪く、携帯型パソコンとの一体化が望まれた。蓄電池による連続稼働は2時間程度で、改善が望まれた。 2.文字の伝送速度は、22Kバイトの病歴サマリ-で約20秒であったが、動画像は391Kバイトの心エコー1秒程度でも約500秒かかり、使い方を工夫する必要があった。これらを2種類のデータをまとめて伝送するのに必要なトータルの時間は675秒で、通信コストは平日昼間で730円、深夜早朝で300円かかり、改善が望まれた。 3.研究者の所属する大学の3階検査部・9階病棟、地方病院1階外来、都心の路上では良好な通信が得られたが、研究者の自宅1階および地下街では通信不能、地上走行中の列車および車両では、通信可能であるが数分で切断されるなどの実験結果が得られた。 4.同じ場所でも、安定して使用できることもあれば、何度も接続に失敗したり、稀に回線が突然切断される場合もあった。ただし条件の悪い場所でも接続に成功すればデータの劣化はなく、機動性の飛躍的向上による絶大なメリットを実感できた。 今後は以上の知見を基に、より高速かつ安価なデジタル通信が可能となる、PHS方式の無線式デジタル公衆回線を採用し、更に実用化の可能性を追究する計画である。
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