研究概要 |
肝細胞癌は日本の男性のガンによる死亡原因の第3位である。近年血清AFPの低値例の割合が増加しておりその診断的意義が低下している。また、積極的に結節性病変の生検が行われているが、病理組織学的に前癌病変との鑑別が非常に困難な例がある。さらに、肝細胞癌の分化度、悪性度を表現、鑑別しうる良いマーカーもないなどの問題が生じている。そこで本研究では、肝癌の血清診断、前癌病変の鑑別、悪性度の判定に有用なマーカー遺伝子の同定を目的とした。 1.cDNAサブトラクション法により、ステージ2の肝癌組織で正常肝組織に比較して発現の亢進しているクローンを25種得た。得られたクローンの1つのDNA塩基配列を決定したところS17RPであった。そこで臨床・病理所見との関連を解析した結果、肝細胞癌では有意に発現が亢進していた。しかし、癌のステージ、病理所見、患者の予後とは相関が認められなかった。残り24種のクローンについて腫瘍マーカーとしての意義を解析中である。 2.肝部分切除後に発現の亢進することを見いだしたチロシン脱リン酸化酵素(PTP)のうち4種、PTP-RL6,PTP-RL8,PTP-RL9,PTP-RL10について、10組の肝癌組織・正常組織のRNAに対するNorthern解析を行ったが、両者の間で発現に差を認めなかった。 3.我々の開発した定量的PCR法をヒト子宮内膜細胞の培養系に応用し、微量の検体でホルモンレセプター発現の僅かの変動を検出した。しかし操作が繁雑であるため、新しい原理に基づき操作が簡単で多量検体に対応できるAmpliSensorアッセイ法の応用を試みた結果、同様に使用可能であることがわかった。
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