文献検討では以下のことがまとめられた:欧米では、癌患者の精神的サポートのためのグループ・モデルは、1970年代初期以来急速に発展してきた。ひとつは専門家によるグループであり、もうひとつはセルフヘルプ・グループである。専門家によるグループの介入方法には教育的介入と心理療法的介入、認知行動療法がある。これらについては事例研究やコントロール群を用いた実験研究によって、死について肯定的な感情を持ちながら話し合える様になる、疎外感の軽減、メンバーが互いに援助し合うようになるなどの効果があることが確かめられてきており、最近では患者の免疫の活性化につながることも解明されつつある。わが国における研究は欧米に比較して遅れており、実践が何か所かで行われているだけで、研究としてまとめられものとはほとんど見られない。 研究者は、癌患者への精神的ケア及び自己治癒力を高めることを目的としたグループ・セラピーを計画し、実施した。グループ・プロセスの記述と参加者の感想文などから、参加者にとっての意味が以下のようにまとめられた:(1)身体ほぐしによる心地よさ、(2)『フォーカシング』による心地よさ、(3)話すことにより楽になる、(4)他の患者とのかかわりによる相互支援、(5)前向きな姿勢への変化、(6)自己への気づき、(7)ファシリテーターからの支援。また、気分プロフィール検査(POMS)をグループ・セラピー実施前と後とで施行した。参加者は5名なので統計的処理はしていないが、すべての参加者がすべての下位項目で気分が改善しており、特に『活気』の項目が変化していることが特徴的であった。 以上の研究結果から、わが国でも、癌患者への精神的サポートとしてのグループ・セラピーを医療の中に位置付けていくことは重要であることが示唆された。今後、グループ・セラピーの方法論を確立していきたい。
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