昭和戦前・戦後期における「家族計画」意識の有無を調査するために、長野県諏訪郡下諏訪町において、1900年代(M33-42年)生まれ/10人、1910年代(M43-T8年)生まれ/17人、1920年代(T9-S4年)生まれ/2人の、計29名の高齢女性からのライフヒストリーの聞き取り調査を行った。調査項目は、家族計画意識の有無(stoppingとspacingを区別)、妊娠/出産歴、出産(場所、姿勢、取り上げ者を含む人間関係)、授乳、断乳、子育て情報源などである。 調査の結果、結婚当初から家族計画を行っていたものはいなかった。受胎/避妊の知識を有していた者が3人あったが、実行との間には関連がみられなかった。ただし、家族規模制限をstoppingによって行っていた者が6人いた。時期的にはすべて戦後であり、方法は堕胎3人、避妊3人であった。意図的なspacingを行っていたものはなく、既に分析を行った大正期の新中間層と比較すると、受胎のコントロールという近代的生命観はあまり浸透してなく、地域差・階層差による違いが看取できた。
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