1.食物繊維の加熱と水和挙動;加熱前後での市販の食物繊維の水和特性を緩和曲線の形状などの緩和挙動から調べた結果、加熱処理は食物繊維の水和特性に影響しない場合が多かった。また、加熱処理後の水和能力(遅い緩和成分のT_2値または緩和速度)の高い食物繊維には未加熱状態と同様にアルギン酸ナトリウムなどがあげられた。一方、例外的に寒天に水を添加した系では緩和成分量の比に大きな変化が認められ、水和能力で規定されている遅い緩和成分はほとんど検出できなくなった。このことから、寒天は食物繊維に比べて加熱処理で緩和挙動が変化しやすいため、水和能力の大小を指標として寒天の水和力や水和量を他の食物繊維と比較する場合には緩和成分の間の交換速度を考慮する必要が示された。また、簡易水和能力測定法の一工程に加熱処理を加え、プロトンの成分量の比を考慮して緩和曲線を分類すると、寒天の緩和曲線はSDFに特徴的なタイプ1であることが判明した。 オートクレープ加熱した多糖類と水和能力;水和能力が高く、熱に対する安定性の高いアルギン酸ナトリウムを水に懸濁後オートクレーブ(130℃)にかけたところ、加熱前の平均モル質量(MW)45万から加熱時間を50分間(MW 11万)、100分間(8万)、200分間(0.3万)と長くした場合に平均モル質量は減少したが、水和能力測定法では平均モル質量8万〜0.3万の試料の水和能力はほぼ同じであった。さらに、収着等温線法で平均モル質量と水分収着水量を比較した場合でも、同じ水分活性値で平均モル質量のみが異なっていても水分収着量は変化しなかった。
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