本研究では球技系運動選手の運動習熟過程における基礎的な運動能力の発達を記録と記録の変動性から検討した。まず、時間経過に伴って、記録の変動性の指標である競技力特性が変動するかどうかを検討した。その結果、解析の対象となった19名8種目、延べ73名中、67名、91.8%が有意な変動を示し、多くの選手が経時的に記録の変動性が変化することが明らかとなった。その変化が経時的に一定傾向を示すか否かについて検討した結果、時間経過と競技力特性の間に有意な線形関係を示した選手は10名、13.7%であり、その中でも安定性が高くなる者が6名、低くなる者が4名であった。従って、記録の変動性は時間経過とは線形関係であるとはいえないことが明らかとなった。記録と記録の変動性の関連を検討した結果、有意な線形関係を示した選手は10名、13.7%であった。これらの相関係数の符号はいずれもプラスであり、記録が向上すれば記録が安定してくることを示す。しかし、先の時間経過と変動性の関連と比較して平均相関係数ならびに相関係数の分散は大きな値を示し、その関連の度合いは個人差が大きいことが示唆された。競技記録と競技記録の安定性を二次元平面上にプロットし、経時的に線で結び、変動のパターン分類を行った。その結果、波状変動、時計回り変動、反時計回り変動ならびにこれらを組み合わせた6つのパターンに分類され、競技記録と記録の変動性の間に非線形の関連があることが推測された。波状変動をする時期は記録が低いあるいは記録の向上傾向が大きく、時計回り、反時計回りの変動をする時期は記録が高いあるいは記録の向上傾向が低い傾向がみられた。このことより、時計回り、反時計回りを示す時期の運動能力はプラトーに達しており、波動変動をする時期は運動能力の向上過程にあることが推測された。以上より競技記録と記録の安定性の2側面より選手の発達状況が評価できる可能性が示唆された。
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