高温下で運動を開始すると、深部体温や皮膚温が変化していないにも関わらず、発汗が起こる.この発汗には筋や筋や腱の機械受容器が関与している可能性がある.そこで本研究では、運動時の発汗調節に腱の機械受容器からの求心性インパルスがどのように関与するのかを明らかにすることを目的とした. Water perfused suiteを用いて皮膚温を約37℃上昇させ、発汗を引き起こさせた.被験者にス-ツ着用後自転車エルゴメータ上で約40分間安静を保持してもらい、その後片足をペダルに置き、30、60および90rpmの受動自転車運動を休息(約5分間)を挟んでそれぞれ2分間実施した.実験中の心拍数、酸素摂取量、食道温、皮膚温(前腕、胸部、大腿および下腿)および局所発汗量(前腕、胸部;カプセル換気法)を連続的(毎秒)に測定した.なお、被験者は成人男性8名(年齢18.7±0.3歳、身長170.9±1.9cmおよび体重63.2±1.5kg)で、実験室の環境温は23〜25℃、相対湿度は54〜58%であった. 受動自転車運動開始後、食道温と平均皮膚温には顕著な変化は認められなかったが、60と90rpmにおいていずれの部位の局所発汗量も運動開始前のそれと比較して有意に増加した.しかし、30rpmにおいては局所発汗量の顕著な増加は認められなかった.また、酸素摂取量も60と90rpmにおいて有意に増加した.このことから、運動時の発汗調節には筋や腱の機械受容器からの求心性インパルスが関与しており、その程度は回転数(求心性インパルスの量)に依存している可能性があることが示唆された.
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