研究概要 |
重量挙選手の減量時に有酸素運動を用いることにより、体脂肪量を効果的に減少しLBW(除脂肪体重)の減少を抑制することが可能か否か、かつ運動諸機能を低下させずに減量できるかを明らかにするために、1日のエネルギー摂取制限が850kcalとなる高蛋白質減量食(蛋白質は2.0g・kg^<-1>・day^<-1>,脂肪はエネルギー比の27.5%)と有酸素運動(1回当たり300kcalを消費する50%VO_2max程度のトレッドミル走)を週に3日間用いた際の大学重量挙選手の20日間の減量が身体組成と運動諸機能へ及ぼす影響を検討した。被験者は大学生男子5名であった。減量期間中は栄養調査を毎日行い残菜量を確認した。その結果、エネルギーと各栄養素の摂取量は十分にコントロールされたことが確認できた。体重の減少量は、平均で2.95kg(1.45kg〜5.66kg)となり、5名とも試合へ出場する体重階級に達した。その体重減少分の内訳は体脂肪量が-2.97kg,LBWが+0.02kgであり、体重減少は体脂肪量によるものであり、LBWが維持できることが明らかとなった。さらに、MRIによる筋断面積と皮下脂肪断面積(腹部,大腿部,下腿部,上腕部)の変化は、上腕部を除いて各部とも皮下脂肪断面積が平均で20.2%〜31.1%減少し、筋断面積が維持され、身体組成の変化を裏づける結果となった。血液成分からは異常がみられなかった。また、尿中総窒素排泄量から推定した窒素出納は5名とも正出納であった。運動諸機能については、最大等尺性収縮による筋力(握力,背筋力,腕伸展力,腕屈曲力,脚屈曲力),体重当たりの最大酸素摂取量,最大無酸素パワーの各項目はいずれも減量前の値を維持し、減量によるマイナスの影響を受けなかった。以上のことから、男子重量挙選手が高蛋白質減量食と50%VO_2max程度の有酸素運動を用いて減量することにより、体脂肪量を効果的に減少しLBWが維持できることが可能となり、かつ運動諸機能も十分に維持して減量できることが明らかとなった。
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