本研究では、日本と米国のボランティア・スポーツ指導者間でみられる指導没頭に伴う生活支障実態の差異と、その差異を規定する要因について意識レベルと行動レベルの二水準で比較検討することを目的とした。 本研究は、32項目からなる質問紙法で行なわれ、そのデータは、主にボランティアで青少年を指導する福岡市の指導者265名と米国のUrbana・Champaigin市の指導者85名によって得られた。本研究で得られた主な結果は、以下の通りである。 1)指導に伴う生活支障認知度については、両国の指導者ともに35%を超えており、差異は認められなかった。しかしながら、具体的な支障、経済的負担、指導のための特別な休暇・休業の有無などにおいて、日本の指導者で著しかった。 2)実際の支障度の差異を規定する要因として、行動レベルにおいては、一週間あたりの指導活動の回数、指導時間の長さ、指導者の数等によって比較検討したが、米国の指導者で回数、時間ともに少なく、指導者の数は多かった。また、認識レベルにおいては、米国の指導者でボランティア活動に対する強い社会的使命感とは裏腹に、他の生活領域とのバランスを大切にしながら余暇完結的に行なうべきだという役割観念が内面化していた。この役割観念によって生活支障認知に対して、よりセンシティブになっているものと推察された。 最後に、これらの結果に対して、主に役割サイクルモデルに依拠して比較検討された。この結果、日本の指導者においては、ボランティア指導者としての適切な役割概念と役割期待をいかに形成するか、また、その意識背景としてボランティア活動の望ましいあり方に係わる適切な社会的規範をいかに構築していくかが重要な課題であることが示唆された。
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