本研究の課題は(1)レジャー研究へのESM適用可能性を検討するとともに(2)日常経験全体から無作為に経験を抽出し、各経験がどの様に定義、意味づけられ、またその経験はどの様な感覚、感情を伴うのか把握することであった。加えて(3)各人が経験をどの様に意味づけし知覚するか…各人のレジャー認知の特性と生活全般の満足度の関連を検討することであった。まず、Experience Sampling Formの試案と経験抽出のタイムスケジュールを作成し予備調査を行った。機器不良や通信範囲外への移動による受信不能頻度を把握し、ESFと送信スケジュールの改善を検討した。 本調査は、50人の女子大学生を対象に10〜1月にかけて実施した。のべ2800回の信号を発信し、48人から2227の有効データを得た。個人の有効回答率は57.1〜100%、平均回答率は82.8%であった。結果の概要を以下に示す。 1.信号時の活動内容、場所、同伴者等自由記述回答をコーディング、集計した。通常、自由時間行動とされる活動の出現率は「会話・交際」が7.9%(N=175)、「マスメディア」13.9%、「外出・娯楽・スポーツ・趣味」9.1%などとなっていた。 2.経験の意味づけ(レジャーの主観的定義)については、「自由の認知」と「内発的動機」の組合わせにより操作的に定義した。"レジャー"状態は「食事」「休息」において高い割合で現れ、「外出・娯楽」「マスメディア」「会話・交際」がこれに続いていた。"レジャー"の出現率が低いのは「アルバイト」「学業」であった。活動に伴う感覚・感情(SD法)をみると、活動のタイプに関係なく一貫して、"レジャー"と認知された時に「肯定的感情」因子の得点が高く、非レジャー状況では得点は低かった。「活動性」因子ではその様な傾向は認められなかった。 3.個人のレジャー認知の特性(レジャー状況出現率)と生活満足度(PILテスト)の関連性を検討した。これら要因間の相関は統計上有意でなかったが、係数の値は先行研究と同程度であり、データの蓄積と継続研究が望まれる。
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