研究概要 |
本研究は,大都市圏中心部における内部構造の変容を解明することを目的とした.そのために,高度経済成長期以降に生起した土地利用の時系列的変化を明らかにた上で,人口分布との関連について解析を行った.本研究の対象地区は札幌市のDIDであり,1980年,1985年,1991年の3年次を研究対象年次とした.まず,土地利用の指標として建物用途別床面積を取り上げ分析を行った結果,商業施設や事務所の増加地帯が中心部から周辺部へ向かって拡大していることが明らかになった.それに伴い,都心周辺地区に位置する住宅地区では事務所併用住宅や商業施設併用住宅が増加しており,当該地区では機能混在化の様相を呈していた.しかし,都心から離れた住宅地区では,このような変化は見られず,単一機能に特化した地区を構成していた.次に,この建物利用変化に対して,建物構造種別床面積のデータを重ね合わせた結果,建物変化の著しい都心周辺部では木造建築物が耐火建築物へと変化しているのに対し,都心から離れた住宅地では木造建築物の比率が比較的高いままであった.このことから,大都市圏中心部においては,都心から周辺に向かって建物の新陳代謝が緩やかになっていることが分かった.最後に,これらの変化と人口との関連について考察すると,当該変化は人口の集積域が縁辺へと拡大するのを追いかけるように起こっていることが明らかになった.上記結果の内容は従来の研究でも報告されていたが,本研究ではそれを今までになく高い精度で解明した.本研究のように行政データを地理情報システムで解析することにより,都市構造の把握を迅速かつ高精度に行うことが可能である.
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