本研究では、子どもたちの自主的なコンピュータリテラシーの獲得を支援するためのマルチメディア教材の設計の特性を、その開発と活用を通して検討した。一連の教材は、コンピュータの活用において必要になる操作内容、例えば絵を描く、保存するといった内容ごとに、それぞれアニメーション、音、絵や図、文字データなどのマルチメディア情報を用いて、基本的な操作内容に限定して制作されている。 具体的には、コンピュータの活用に関して以下のように活動内容を分けた。 1 コンピュータについて基本的なことを知る。 2 コンピュータに慣れる。 3 コンピュータでお話の絵を描く。 4 描いた絵をコンピュータに保存していく。 5 描いた絵に、台詞、効果音・BGMを入れる。 6 できあがった絵をコンピュータでマルチ電子芝居に仕上げる。 そして、この1から6の活動ごとに教材を作成した。1はコンピュータそのものについてのことや、マウスの操作方法といったことが主な情報になるため、ビデオ教材にした。2から6については、マルチ電子芝居の制作活動で使用するソフトウェアについての説明のため、マルチメディア教材にした。 ここで開発した教材は、子どもたちが活用している場面の行動観察によって評価を行った。その結果、 (1)本教材の活用方法については、すべてを子どもの自主性に任せるのではなく、ビデオ教材に加えて、他の教材においても、より明確に提示することが必要である、(2)操作の連続的な手続をより分かりやすく提示するマルチメディアの特性を持った教材の開発をすることで、子どもたちの教材理解が深まった、(3)本教材では、身に付けさせたいコンピュータリテラシーの項目を最低限に絞ることで、より子どもの主体的な発見をともなうコンピュータリテラシーの獲得がみられた、ということが明らかになった。
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