映像の分類方法として、ある対象物を鍵(キュー)としてその対象物があるかないかという共通点を探し出す方法(共通点分類)と、いくつかの映像から受け取る印象を総合的にまとめる方法(意味分類)があることが今回の実験でも確認できた。特に、今回キューとなった対象物は映像の中で占める割合が大きい、もしくは色、画面上の動きなどの点で主要なものと判断され、各被験者とも共通点分類を行った。 実験後のインタビューにより、スキーマと大きく関連していると思われる意味分類は創造的活動によるものというよりはむしろ広い意味での文化や背景知識によるものではないかと考えられた。例えば、ドイツに滞在していたある被験者は、音楽ではなくライン川の映像より「ブラームス」で意味分類を行ったり、町中の人通りのある映像よりドイツでの風習から「ビール」で意味分類を行ったりしている。また、アメリカに滞在していた別の被験者は同じく町中の人通りのある映像を「street」として意味分類を行っている。海外だけではなく、日本史、仏像に精通し、接触する機会の多い被験者は民芸品や噴水の彫像も「像」として意味分類を行っている。 しかし、映像には画像のほかにクラシック音楽と、一部民族音楽が流れていたが、音楽に深く造詣があり、自身でも楽器演奏などの経験をかなり持つ被験者の「音楽なら分けられるのに」という発言があったにもかかわらず、音楽では分類しないという結果となった。これは前回までの結果と同じであり、音楽の背景知識は一部だけでは存在しないのか、追求する必要がある。 今後、アイカメラなど分析的手法を使い研究の一般化を追究するとともに、衛星放送を利用する、留学生を被験者にするなど、文化や背景知識によるスキーマと映像視聴の関連を明らかにしていきたい。
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