ニーダーザクセン州の前期中等教育段階における政治的陶冶(地理・歴史・ゾチアルクンデ)の検定教科書の内容構成を調査・分析した。地理教科書は「主題的-地域的アプローチ」に基づいて編成されている。これは、空間構造とその形成プロセスの認識の論理的順次性に基づき、学習内容を空間形成プロセスの認識、空間システムの構造認識に二段階化し編成するものである。このような教科書内容構成では、地理事象を人間による空間的行動と空間構造との相互作用をもとに認識できることが目指されているといえる。歴史教科書はヨーロッパ史を中心とした通史の枠組みに基づいて編成されている。この枠組みは伝統的なものであるが、個々の主題では、歴史事象を政治的・経済的・社会的・文化的なさまざまな諸要因からなる社会構造と関連づけることによってその原因・現象形態・結果を認識する学習が行われる。このような教科書内容構成では、歴史事象を政治的・社会的行為と社会全体の構造との相互作用をもとに認識できることが目指されているといえる。ゾチアルクンデ教科書は、家族・学校・余暇・公共生活・職業・外国との関係といった社会領域から選択された具体的なさまざまな社会生活状況によって編成されている。そして個々の社会生活状況を対象に、どのような状況がのぞましいか、それはどうすれば達成可能か、を追求する学習が行われる。このような教科書内容構成では、社会的に責任ある市民として自ら考え判断し社会過程に共同参加できることが目指されているといえる。以上のように政治的陶冶のための諸教科目の教科書は、人間行為と社会との相互作用の認識を育成することを目指す編成原理によって構成されている。これはドイツ統一をはじめとして大きく変動する社会において、民主主義的市民を育成することによって理想的な社会を構築する機能が学校教育における政治的陶冶に求められているためであると考えられる。
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