教科書を教育メディアとという観点から捉え、教科書で使われる図、写真等の画像データベース化を試みた。 基礎的な資料を作成すべく、昭和22年から、平成4年の間に検定を受け発行された、小学校と中学校の理科教科書について、絵、図、写真等の扱われ方がどのように変遷してきたか、検討した。その結果、教科書の学年、出版社による多少の差はあるものの、おおよその傾向として以下のような知見を得た。 小学校の教科書においては、昭和24年では、白黒の線画で、ごく一部に白黒写真が使われる。また、扉絵に限り色刷りの絵が使われる。その後、昭和27年に色刷りの絵が使われるようになり、昭和29年では、白黒写真が主となり、色刷りの絵、着色写真が使われる。そして、昭和35にはほぼ全ページが彩色された絵となり、一部にほぼ全ページに白黒の写真が使われ、昭和39年からカラー写真が加わった。昭和48年全ページ着色され写真もカラーがほとんどである。昭和54年ではカラー写真が大きくなった。さらに、平成3年ではカラー写真が主となり、一部に彩色画、説明部分には二色刷の絵が使われる。 中学校の理科教科書においても、彩色画、写真の登場時期は小学校と同様の傾向であるが、説明のための抽象的な表現が多くなっていることが、大きな違いである。そのため、教科書全体にわたって、カラー写真や彩色画ということはなく、二色程度の線画も多く使われている。 今回は表現形式に限って検討したが、今後、教科書の内容と表現形式の妥当性という観点からも分析し、教科書をマルチメディア化する際の指標とする予定である。
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