太陽風内の磁場が地球の磁気圏と相互作用する境界領域は、磁場はもちろん、電場、プラズマ密度、モーメント、エネルギーなどの物理量に対して電磁場物理法則から導かれる拘束条件(Maxwell則)が存在する。従来は、データの取り扱い安さから磁気データに対する拘束条件をのみ利用して境界領域の空間的同定がなされてきた。本研究では、上述したすべての物理量に対する拘束条件を明示的にデータ解析の枠組みにモデルとして取り込む手法を提案した(雑誌Annals of Geophysicaeに投稿中)。この手法においては、データから太陽風の速度も、現実に利用可能な物理量を組み合わせることを通した統計的解析により推定することができるという点で従来の方法から大きく進歩している。この手法はきわめて一般性の高い枠組みであるが、現時点において取得・解析可能なデータは、磁場・電場の両者に限られる場合も多いことを考慮し、一般にデータ解析がなされる現場の状況を反映した具体的・現実的なアルゴリズムもあわせて提案した。モデルをデータを通して考察するという思想を実体化するために、この10年継続して研究しているベイズ統計周辺で確立された、あるいは最新の技法を十分に活用した。例えば、磁場データと比較して観測ノイズの影響がきわめて大きいがために丁寧に取り扱われてこなかった電場データからも、磁場データと同時に適切に取り扱うことにより、新しい情報を取得できる可能性が見えてきた。具体的なデータに対する適応は、諸般の事情によりまだおこなっていないが、simulation dataを作成し、アルゴリズムの計算機への実装化の第一歩を踏み出した。
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