対話音声認識のための発話予測を高度化するために、動機に基づいて発話をモデル化した。 1.質問者と回答者の役割を想定した模擬対話を収録し、発話がなぜ行われるかという点に注目して各発話における動機を分類した。その結果、発話を行うという行為における動機として五つの異なるレベル、すなわち問題解決行為の動機、問題解決評価行為の動機、対話遂行行為の動機、情報伝達行為の動機、情報授受確立行為の動機を同定した。問題解決行為の動機は個々の対話の領域知識に依存しているが、その他の動機は対話の領域知識とは独立したものとして扱える。 2.模擬対話を分析することによって、5種類の動機のうち幾つかの動機が組み合わされて発話が表出されるものと考え、動機が組み合わされるパタンとして、6通りの動機の組み合わせによって発話が表出されるモデルを提案した。情報授受確立行為の動機は常に単独で機能し、聞き直しや相槌などの発話を表出する。それ以外の発話では、問題解決行為の動機あるいは対話遂行行為の動機が発話を駆動する「力」を与え、問題解決評価行為の動機などが連鎖しながら、最終的に情報伝達行為の動機によって情報の授受を行う発話が表出される。 3.観光案内を行う模擬対話を対象として、提案した発話動機モデルに基づいて解析し、発話の動機と話題の遷移パタンの関連性について考察した。
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