申請備品であるデジタルマルチメーター及びペンレコーダーが納入されてから、K-C_<60>プラズマによる成膜実験を行った。その結果、以下に述べる結果を得ている。 (1)赤外吸収分光及びX線マイクロアナライザーによるK-C_<60>膜の組成分析を行った結果、基板に印加するバイアス電圧とプラズマ電位の半径方向分布変化によりプラズマ中心部と周辺部とでは全く異なった膜が形成されており、特に周辺部で形成された膜に関しては均一性の良い膜が得られた。 (2)K-C_<60>膜の原子間力顕微鏡による表面観察並びにX線回析による結晶性分析の結果、バイアス電圧が膜厚、結晶構造、表面粗さなどの膜構造に大きな変化を与えることが確認された。更にある一定のバイアス電圧の場合、カリウムとK-C_<60>による電荷移動型錯体化合物(K_3C_<60>、K_4C_<60>)が基板上に形成されていると思われる結果が得られており、このことは以前に測定を行ったバイアス電圧による膜の電気伝導変化と定性的一致がみられた。 (3)バイアス電圧によるいカリウム、C_<60>両イオンの選択的な入射エネルギー制御により、原子内包型フラーレンK@C_<60>及びK@C_<58>(カリウム原子がC_<60>、C_<58>の球殻内に内包したもの)を形成することに成功した。さらに原子内包型フラーレンの生成率がバイアス電圧に大きく依存することが判明した。 今後の研究展開としては、K-プラズマ専用装置による“その場"測定及び原子内包型フラーレンの高効率生成等を考えている。
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