プラズマに擾乱を与えることなくプラズマの診断が可能な発光分光分析法の短所である「測定領域がウインドウから観測できる範囲に限られる」という問題を解決するため、真空容器内に光ファイバーケーブルを設置し、プラズマ中の任意の位置の発光を分光器内に取り入れ診断を行うシステムの構築を試みた。構築時を行う際に発生し回避した問題点を以下に示す。 1.光ファイバーケーブルとして一般的に知られている石英コアのケーブルを使用すると、コアと外部の界面部を通じてリ-クが発生する、コアの径が細いため出力光が微弱であるといった問題が生じた。このため、紫外領域の透過率は石英コアに比べ劣ってはいるが、構造が簡単でコアの径の大きなプラスチックコアの光ファイバーケーブルを用いてシステムを構築した。 2.位置分解能を得るために従来の発光分光システムで使用されているスリットの代わりに、光ファイバーの受光端に絶縁物の円筒を設置した。絶縁物として一般的に知られているセラミックスやテフロンの円筒を用いて実験を行った結果、これらの物質は完全な遮光を実現できず、十分な位置分解能が得られないという問題が明らかになった。様々な材料による試行を行った結果、表面を熱酸化させた銅の円筒を使用した場合に最も細い径で高い位置分解能を得ることができた。 以上の点を考慮して作製した発光分光システムは、数mTorrの圧力でプラズマを発生させるマグネトロンプラズマ装置に設置してもリ-クを発生することなく測定を行うことが可能であった。また高い波長分解能を必要とするアクチノメトリ法を用いたAr+CF_4マグネトロンプラズマ中のフッ素原子の空間構造の測定も実行できた。これらの結果から、ここで開発した発光分光システムは、プラズマの任意の位置の分析を行う方法として有効であると考えられる。
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