酸化物イオンを含む溶融塩化物中でのニッケルの表面に生成する耐食性表面酸化物薄膜の役割について、電気化学測定法や表面分析を行って調べた。その結果、いわゆるactive-passive型の不働態化の起きる電位より卑な電位で、酸化物薄膜を生成するアンダーポテンシャル不働態化現象(Undcrpotcntial Passivation=UPP)を見いだし、また、この酸化物薄膜の成長に関して、電気化学手法を用いて、その挙動を明らかにした。まず、酸化物薄膜の成長は、電位によって大きく変化する事が分かった。具体的には、電位領域0-0.2Vでは、アモルファス酸化物薄膜の成長が先行するが、後に多結晶の薄膜が成長することが明らかになった。また、電位領域0.2-0.3Vでは主にアモルファス酸化物が成長し、多結晶や不定比酸化物薄膜は生成しにくくなることが明らかになった。この電位領域では、酸化物薄膜は最も成長しにくく耐食性を持った酸化物薄膜の成長が期待できる。さらに、0.3-0.6Vでは、アモルファス酸化物の成長が先行するが、不定比酸化物薄膜の成長が、電位を貴にする程、促進されることが分かった。 さらに、アンダーポテンシャル不働態酸化物薄膜の塩化物イオン破壊による孔食生成について調べた結果、孔食臨界電位が存在し、それを越えて貴な電位にした場合には激しい孔食を引き起こすことが明らかになった。
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