パナジウム合金は長半減期の誘導放射能が小さいことや高温強度特性に優れること等から核融合炉材料として研究が進められ、近年特に大規模溶解を行うなどして実用材料としての研究が盛んになっている。本研究では実用材料として重要な室温近傍での時効硬化について調べた。核融合炉用候補合金であるV-Ti-Cr-Si-Al-Y系合金を熱間圧延、冷間圧延した後、種々の温度(500から1250℃)で焼鈍した後、長時間(約2x10^8s)室温で保持することによって時効処理した。ビッカース微小硬さ試験、微小領域X線回折試験を行った結果、時効処理前の焼鈍温度によれず時効硬化が発現することがわかった。時効の前後でビッカース硬さがおよそ50増加し、硬化することがわかった。純バナジウムでは上記合金と同じ熱処理および時効処理を行っても時効硬化しないことが明らかになった。さらに、36MeVのヘリウムイオンをエネルギーデクレーダを用い、厚さ0.25mmの試料中に厚さ方向にほぼ均一に約0.02dpa(displacement per atom)のはじき出し損傷を与えることにより、時効材で観察される硬化は消滅し、軟化することがわかった。これまでの材料照射研究での照射後の冷却期間が一年程度であることを考えると、照射硬化について再検討を要する可能性を本研究成果は示唆するものである。
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