近年、汚染土壌・地下水浄化のためのbioremediation技術が注目されているが、汚染位置では酸素が不足する場合が多く、十分な浄化を行うためには数年もかかるとされている。そこで本研究では浄化時間を短縮するための過酸化水素による酸素供給方法、すなわちケミカルエアレーション方法の開発を目的とした。過酸化水素による酸素添加方法の経済性、過酸化の分析方法と自己分解速度について検討する共に、過酸化水素の添加による土壌微生物相への影響を解析するための混合培養系微生物群動態解析手法について検討を行った。 過酸化水素は汚染土壌・地下水に添加されると自己分解して酸素となり、酸素を供給できる。酸素添加コストは1kg酸素当たり600円程度と割高であるが、設備投資とエネルギー消費がほとんどないため、経済性は十分成り立つと考えられる。 過酸化水素の分析には、従来の過マンガン酸カリウムによる滴定方法に代わって、チタン(IV)を呈色剤とした分光光度法を導入し、分析時間を大幅に短縮できた。 土壌中における過酸化水素の運命を予測するための基礎実験として、過酸化水素の分解に対する土壌の触媒効果について検討を行った。実験に用いた土壌は施肥管理をされている慣行区、無肥料区および厩肥区の土壌であり、最終濃度が30g/lとなるように、過酸化水素溶液に懸濁させた。過酸化水素の分解速度は、一次速度式で表示できると示され、半減期は慣行区および無肥料区では3.6時間、厩肥区土壌ではわずか0.6時間であった。土壌の触媒効果によって過酸化水素がすぐ分解してしまうので、過酸化水素の分解を抑制し、エアレーション効果を長期間維持するための技術開発は今後の主な課題となる。 土壌微生物相変化の解析にはキノンプロファイル法が適用できることが確認されたが、土壌微生物相に対する過酸化水素の影響の解析には至っておらず、今後の課題として残されている。
|