研究概要 |
分子内不斉ストレッカー反応を用いたα,α-二置換-α-アミノ酸類の合成研究を行った。 反応の最適化とメカニズムの検討 分子内ストレッカー反応では、環状イミンへのシアノアニオンの付加が、アミノ酸由来の不斉炭素に基ずく1,3-不斉誘起により制御できると考えた。不斉源であるアミノ酸として、アラニン、フェニルアラニン、バリンなどについて検討したところ、最もかさ高いと思われるバリンが、よい選択性(25:1)を与えた。また、^2H(iPROD),^<13>C(Na^<13>CN)化実験などを通して、本反応のメカニズムについて幾つかの知見が得られた。反応中間体のイミンは、反応中、エナミンや生成物と平衡状態にある。従って、選択性の悪い不斉補助基であるアラニン(3:1,2h)の場合にも、反応時間を長くすると選択性が向上する(10:1,10h)。これは、本反応の初期における選択性が、速度論的支配を受けていることを意味している。 α,α-二置換-α-アミノ酸類の合成 これまでに、本反応を用いα-メチルセリン・α-メチルスレオニンの合成を行ってきたが、更に本反応の一般性や有用性を示すため、他のα,α-二置換-α-アミノ酸類の合成を行った。本研究者の研究背景から、グルタメートレセプター作動薬をターゲットとしたアナログの合成を行った。 2-オキソ-3-フェニルプロパノールを基質とし、L-バリンを不斉補助基としたところ、16:1の選択性でシアノ付加体を与え、α-(ヒドロキシメチル)フェニルアラニンを光学活性体として得た。このフェニル基をオゾン酸化することにより、α-(ヒドロキシメチル)アスパラギン酸を合成した。この両光学異性体は、どちらもグルタミン酸の再吸収を阻害する作用があることがわかった。その他のアミノ酸の合成も現在進行中である。
|