非筋細胞ミオシン重鎖のアイソフォームであるMHC-Bのアクチン結合部位に神経組織特異的に発現しているB1インサーションの機能を明らかにすることを目的として、今年度は以下の実験を行った。 (1)インサーション部分に相当する12merペプチドを認識するポリクローナル抗体を用いて、ラットの脳組織の各領域より抽出したタンパク質画分のWestern blottingを行った。以前我々は、ニワトリ及びラットにおいてはB1インサーションを含むミオシンが脳内でも小脳、脳幹部等の古い脳と呼ばれる部位で多く発現することを見いだしたが、その後1toh等によりHumanでは小脳よりも大脳においてB1の発現が多いという報告があった。そこでラットの大脳をさらに細かく分離しB1の発現量を調べたところ、大脳皮質、脳下垂体、眼神経、また嗅葉においてもB1の発現は非常に少ないということがわかった。また脳下垂体と嗅葉でB1を含まないMHC-Bが他の脳内の領域よりも多く発現していることがわかった。 (2)細胞性粘菌Dictyostelium discoideumのミオシン重鎖を欠失する変異体に、HumanのB1インサーションを重鎖に持つミオシンを大量発現させる実験をスタートした。現在、粘菌のミオシン重鎖をコードするcDNAを持つプラスミドの50K-20K接合部位の配列をHumanのMHC-Bの配列に組み換えたプラスミドを作成できたところで、さらに、B1インサーション部分を組み込み、粘菌のミオシンも含めて3種のミオシンを大量発現しミオシンの性質を比較しB1インサーションが挿入された影響を検討する予定である。
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